研究概要 |
平成13年度は前年度までに積み上げた実績をもとにして、さらに具体的な流れの解析を進めた。最初に研究代表者による理論的研究の成果を述べる。今回特に重点的に行った研究は、熱対流中における粒子拡散の研究である。前年度までに、大変精度の高い計算スキームを完成し、それを用いて流れを精度よく求めることができた。これに微小粒子または微小気泡を混入させ、その運動を追った。その結果、多くの興味ある結果が得られた。まず、微小粒子の運動を追跡するには流体粒子の動きを調べればよいことが示された。原理的には、流体中の粒子の運動を追うにはそれに流体から働く粘性抵抗と、粒子に働く重力・浮力などの体積力の合力を求め、運動方程式を解く必要がある。しかし、いくつかの例を調べた結果によれば、粒子の大きさが十分小さく、密度が周囲の流体とそれほど大きく異ならない場合は、流体粒子の動きと粒子の軌跡はほとんど一致することがわかった。ただし、時間経過に伴うその位置にはかなり大きなずれはある。従って、流線を追うことで、粒子拡散を研究することが可能である。レイリー数が約5,000-12,000の範囲で立方体箱内の熱対流を調べた結果、既に多くの流れで知られている流線カオス存在がこの場合にも確かめられた。この流れでは、2つの固定点(実は閉曲線)があり、その周りにトーラス状に粒子の軌跡がカオス的に分布していることが示された。この傾向は調べたレイリー数の範囲では定性的な変化はなく、古くから知られている立方体キヤビティー内での流線カオスが、レイノルズ数の変化に対してその様子を大きく変化させるのとは異なった性質を持つことがわかった。一方、研究分担者による実験的研究は、研究分担者が本科学研究遂行途中に大学を移動したため、残念ながら本年度はめざましい結果を得ることはできなかった。しかし、本科学研究終了後も研究を続け、特に流体抵抗の削減に関連した研究を行う予定である。
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