研究概要 |
平成11年度、平成12年度は、ほぼ大半の努力を基礎的な実験装置の作成、数値計算コードのプログラムに費やした。研究代表者による数値計算コードは、閉領域の計算を非常に精密に行うことのできるような精度の高いものであって、特に、格子間隔の配置に工夫を行い、最適な格子配置を求めた。また、速度場、温度場、混合物の濃度場等をスタガードに配置し、数値不安定を取り除くことに努めた。この段階で得られた主な結果は、臨界レイリー数の存在を確認したことである。一方、研究分担者による実験的研究では、気泡を混入したシアー流の実験装置を作成した。矩形管内流の一つの辺に高い振動数の振動を加えることによって流れの中に多量の気泡を混入する。測定は、精密なLDVで行う。この段階では測定誤差がまだ大きく、重要な結果は得られなかった。平成13年度には、前年度までに積み上げた実績を基にして、流れの可視化をAVSを用いて行い、時間と共に対流の様子がどの様に変化していくかを調べた。さらに、非線形項を保存形で行うかそれとも非保存形で行うかで結果が変化するかを調べたが、大きな影響はないことが分かった。最終年度の平成14年度には、主として熱対流中の粒子拡散の研究を行った。レイリー数が約5,000-12,000の範囲で立方体箱内の熱対流を調べた結果、既に多くの流れで知られている流線カオス存在がこの場合にも確かめられた。この流れでは、2つの固定点(実は閉曲線)があり、その周りにトーラス状に粒子の軌跡がカオス的に分布していることが示された。この傾向は調べたレイリー数の範囲では定性的な変化はなく、古くから知られている立方体キャビティー内での流線カオスが、レイノルズ数の変化に対してその様子を大きく変化させるのとは異なった性質を持つことがわかった。一方、研究分担者による実験的研究は、研究分担者が本科学研究遂行途中に大学を移動したため、残念ながら本年度はめざましい結果を得ることはできなかった。しかし、本科学研究終了後も研究を続け、特に流体抵抗の削減に関連した研究を行う予定である。
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