研究概要 |
本研究の目的は,トップダウン自動徴分の領域削減機構を組み込み,より大規模な問題に対処できるような数値情報処理システムを設計し,試作することである.本年度は4個の主要な目標を設定した.1番目はこれまでの研究の発展である.現在までに作成した処理系の概要を1999年7月に,イギリス・エディンバラで開催された工業数学・応用数学の国際会議にて発表した.その場で米国の自動微分処理系の開発者と処理系に関する意見交換を行い,有意義な情報収集を行うことができた.2番目は継続研究として多様なデータ型を処理するシステムの設計開発である.これについては,研究代表者の所属する研究グループ内で本研究とは別に作成されたC_<++>の処理系による多倍長浮動小数点数を用いた精度保証付き処理系の性能を評価し,そこで実験的に提案されている機能の組み込みを考慮中である.3番目の関連研究の調査としては,1999年11月に理化学研究所で開催された線形計算に関する国際ワークショップに参加し,大規模行列の固有値計算に関する研究を発表した.また,2000年6月にフランス・ニースで開催される自動微分に関する国際ワークショップのプログラム委員として仕事をしている.4番目のグラフィカルユーザーインターフェースを用いた使いやすい処理系については,今年度は未着手に終わった.これは,本来の計算の品質保証の処理系としての機能強化の方を優先したためである. 本年度は備品としてAlphaチップを積んだワークステーションを購入予定であったが,その後Pentium-IIIとRDRAMとを搭載した機種が発売されたので,計算能力的に優れている後者の購入を試みた.しかし,CPUが品薄で納期が不明確のため購入を断念した.代わりに,サンマイクロシステムズ社のUltra10とアップル社のパーソナルコンピュータを購入した.
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