炭素同素体の積極的複合による気相合成ダイヤモンドの飛躍的高じん化

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11650075
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 神谷 庄司 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00204628)
• 研究分担者: 坂 真澄 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20158918) ; 梅原 徳次 東京都立科学技術大学, 工学部, 助教授 (70203586)
• キーワード: 気相合成ダイヤモンド / 非晶質炭素 / 薄膜 / 付着強度 / 基板バイアス処理 / 結晶組織 / 高じん化

研究概要

本研究は、従来気相合成(CVD)ダイヤモンド中の不純物として認識されていた非晶質炭素を積極的に制御することにより有効利用し、ダイヤモンド薄膜のじん性を飛躍的に改善することを目的とするものである。最終年度である本年度は、以下の項目に関する研究を行った。
複合構造の制御による高じん性薄膜の実現 昨年度に引き続き、ダイヤモンド薄膜と基板との界面における結晶核の状態を制御する有効な手法として知られている基板バイアス電位処理について検討し、これによって得られるダイヤモンド薄膜の界面のじん性との関係の詳細な調査を行った。この結果、特定のバイアス条件において、これまでに計測された値の中でも最大の界面のじん性値を得ることに成功し、界面の結晶状態を最適に制御することによって、ダイヤモンド薄膜の強度を飛躍的に向上させることが可能であることが示された。
一方、基板上に形成されたダイヤモンド薄膜が外力を受けた際に生じる応力のシミュレーションから、ダイヤモンド薄膜の破壊はまず界面側にき裂が発生し、界面き裂の成長を伴いながら、これが薄膜の表面側に進展することが示唆された。従って、より破壊抵抗の大きなダイヤモンド薄膜を得るためには、界面のじん性を大きくすると同時に界面近傍の薄膜そのもののじん性をより大きくすることが有効である。CVDダイヤモンド薄膜そのもののじん性については、原料ガス中のメタン濃度の増大とともに非晶質炭素含有量が増大し、これにともなって単調に減少することが昨年度の研究により確認されている。これに対して界面のじん性を最大化するためには適切な結晶構造を得る特定のメタン濃度が存在するため、合成初期段階においてこれら二つの相反する要求の最適化について検討し、ダイヤモンド薄膜の総合的強じん化を試みた。

研究成果

• [文献書誌] 神谷庄司(木村浩樹,坂真澄,阿部博之): "超硬合金製切削工具上に形成されたダイヤモンドコーティングの破壊じん性の計測"日本機械学会2000年度年次大会講演論文集. No.00-1,Vol.III. 211-212 (2000)
• [文献書誌] 神谷庄司(井上昭徳,坂真澄,阿部博之): "超硬合金基板上のダイヤモンドコーティングの界面じん性の評価"日本機械学会2000年度年次大会講演論文集. No.00-1,Vol.III. 213-214 (2000)
• [文献書誌] S.Kamiya(N.Yoshida,M.Saka and H.Abe): "Quantitative measurement for the effect of enhanced nucleation on the adhesive strength of diamond coatings"Seventh international conference on plasma surface engineering conference and exhibition,September 17-21,2000,Garmisch-Partenkirchen,Germany.. 276-276 (2000)
• [文献書誌] H.Takahashi(S.Kamiya,M.Saka and H.Abe): "Fracture toughness of the interface between CVD diamond film and silicon substrate in the relation with methane concentration in the source gas mixture"Diamond and Related Materials. (in press). (2001)
• [文献書誌] H.Liu(H.Hanyu,S.Kamiya,A.Inoue): "Pretreatment of WC-Co substrates for the improvement of adhesion of diamond coatings and its quantitative evaluation"Proceedings of international workshop on sensing and evaluation of material systems,August 22,2000,Sendai,Japan.. 33-39 (2000)
• [文献書誌] K.Kato(H.Koide,N.Umehara): "Micro-wear properties of carbon nitride coatings"Wear. Vol.238. 40-44 (2000)