研究概要 |
本研究では,従来法の欠点を克服し得る新しい概念に基づく地殼応力計測法の可能性を理論的,実験的に検討することを目的とする.同法では,岩体に外力を負荷すると岩体のマクロな電気伝導度が変化するという現象を利用する.このため,まず,岩石比抵抗(電気伝導度の逆数)の基本特性を室内実験によって調ベた.その結果を踏まえて,次に,地殼応力場中にあるボアホール周りに発生する比抵抗分布を,ボアホール壁面に設置した電極を用いて測定する可能性と,その結果から地殻応力を評価する可能性を主に理論解析を行って検討した.この結果,ボアホール壁面の周方向に,等間隔で配置した4つの電極を用い,いわゆる四極法によってボアホール壁面における見掛け抵抗を測り,その結果から,ボアホール周りの比抵抗を評価する場合,電極間隔を5゜程度にすれば,ボアホール壁面の極近傍,すなわち,ボアホール壁面からボアホー 半径の1割程度の範囲の比抵抗を測定できることがわかった.また,四極法の測定結果から以下のようにして地殻応力を評価できることがわかった.まず,周方向に加え,ボアホール軸方向にも周方向と同じ間隔で電極を配置し,ボアホール壁面の見掛け抵抗を測定する.このようにして測定した周方向と軸方向の見掛け抵抗の差は,測定位置のボアホール壁面が受けている周方向応力と軸方向応力の差に正比例する.両者の比例定数は,測定対象深度のコアが有れば上記の室内実験によって決定でき,また,ボアホール壁面における周方向応力と軸方向応力の差は,地殻応力の関数として与えられる.これらのことから,周方向と軸方向の見掛け抵抗の差が最小になる方向として,水平面内の最大主応力の方向が求められる.さらに,鉛直方向の地殼応力を被り圧(静岩圧)で既知とすれば,周方向角度の異なる2カ所の見掛け抵抗測定結果から,水平面内における最大及び最小の地殻応力の大きさを評価できる.
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