弾塑性構造最適化問題では、設計変数空間(design variabe space)における目的関数(object function)は極小点(local minima)を数多く有するが、それの属する局所的超凹曲面の境界は勾配が不連続となることが多い。その理由は、設計変更に伴い構造の一部が弾性から塑性に或いは塑性から弾性に変化するため、目的関数が構造応答を含んで定義される場合、目的関数も勾配が不連綿となるのである。このような特徴を有する弾塑性問題の構造最適化を行うに当たっては、従来の勾配法を用いると.初期値(初期設計)の属する局所的超凹曲面から脱出することは困難であり、結局は初期値の属する超凹曲面の極小値に解は収束することになってしまう。そこで本研究では目的関数にLagrange未定乗数法を用いて構造力学問題の平衡条件を付加し、設計変数だけでなく構造応答の変位も加えた変数空間において勾配法による最適解の探索を行うことによりこの問題を解決することを提案した。このような設計変数と構造応答変数を合わせた空間における最適解の探索法は、構造解析と設計最適化を交互に繰り返し行う従来の手法(Nested Approachと呼ばれることが多い)に対して、計算効率を向上させる目的から、同時最適化(Integrated Approach)手法として弾性問題において応用が行われてきた。しかし上述のように局所解脱出の観点から弾塑性問題に対して適用する試みはこれまで全くなされて来なかった。本研究では負荷経路依存性を有する弾塑性問題における厳密な感度と2次の勾配法、すなわちNewton法に基いて同時最適化の定式化を行った後、幾つかの弾塑性問題について数値計算を行い本手法の有効性を示した。
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