研究概要 |
CFRP積層板は層間強度が弱く,工具落下など面外からの負荷で容易に層間はく離が生じる.層間はく離は目視発見が困難であり,積層板の圧縮強度・圧縮剛性を著しく低下させる.CFRP積層構造物の信頼性確保のために層間はく離を現場で容易に検出する知的構造の開発が要求されている.そこで,炭素繊維の導電性を利用し,炭素繊維接触のネットワークが層間はく離進展で破壊されて電気抵抗変化を生じ,この変化を積層板表面に作成した複数電極を用いて測定することで,層間はく離位置と寸法を定量的に同定するスマート構造開発を梁試験片の貫通はく離で実験的に実施してきた.しかし,実機異物衝突では積層板中に埋没はく離が発生する.そこで本年度では電気抵抗変化法を実機埋没はく離へ適用し,その有効性を直交積層板[0_2/90_2]sと擬似等方積層板[0/45/-45/90]sを用いて実験的に検証した.2種類の平板に昨年度開発した銅箔を一体成形で接着する高信頼性電極を5行2列で作成し,圧子押し込み方式による層間はく離を発生させ,実験的にこの層間はく離の同定を電気抵抗変化法で行った.はく離導入は圧子押し込み試験によってCFRPの直交積層板と擬似等方性積層板に実機の衝撃はく離と同じ埋没はく離が導入されている.試験前と試験後に電極間の電気抵抗を測定し,その電気抵抗変化からはく離を同定する.はく離による電気抵抗変化は非常に微小であり,昨年度の梁試験片よりもさらに微小であった.このため,ブリッジ回路を改善し,はく離による微小な電気抵抗変化を測定可能なように設定した.層間はく離と電気抵抗変化の関係を求めるために梁試験片と同様の応答曲面法が適用した.ただし,はく離位置に関しては列方位と行方位の2つの応答曲面を作成し,はく離位置を同定した.その結果,この方法は直交積層板と擬似等方性積層板の埋没はく離の位置と寸法の同定に成功することが明らかになり,また積層構成の影響が明らかになった.
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