研究概要 |
CFRP積層板は層間強度が弱く,工具落下など面外からの弱い衝撃でも容易に層間にはく離が発生し,構造物の圧縮強度・圧縮剛性の大幅な低下を招く.そこで,層間はく離の検出は構造安全性保証の観点から非常に重要となる.このため,CFRP積層構造では稼働中もしくは保守点検時に非破壊的,自動的に容易に層間はく離を検出できる知的構造が望まれている.本研究では,強化繊維の炭素繊維をセンサとして使用する電気ポテンシャル法を用いてCFRP積層板内部に存在する層間はく離の位置および寸法の定量的検出を実験的に実施した.層間はく離による電気ポテンシャル変化から層間はく離の位置および寸法を検出するには,ポテンシャル変化と層間はく離の位置および寸法の関係を求める逆問題手法が必要となる.そこで本手法ではポテンシャル変化と層間はく離の位置および寸法の関係を応答曲面で近似的に求めた.まず簡単な梁形状試験片を用いて1次元問題に対して適用した.さらに実機構造に適用することを考慮して,平板形状試験片を用いて完全に埋没する層間はく離の位置と寸法の同定問題に対して本手法を適用し,その有効性を実験的に確認した.その結果以下のことが明らかになった.(1)電気抵抗変化または電圧変化の情報に応答曲面法および実験計画法を適用することで,逆問題である層間はく離の位置および寸法の定量的同定が可能である.(2)電極を表面層に5個配置し,積層構成ごとの実験値に基づく応答曲面により,高い同定精度が得られる.(3)電気抵抗変化法・電圧変化法の両測定法ともに,実機平板構造の埋没はく離同定問題に対しても有効である.
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