形状記憶合金による低熱源発電に関する基礎的研究(熱・機械繰返し特性と長寿命化)

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11650080
• 研究機関: 電気通信大学
• 研究代表者: 越智 保雄 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (70017416)
• 研究分担者: 朱 世杰 電気通信大学, 大学院・電気通信研究科, 助教授 (60283032) ; 松村 隆 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (00251710)
• キーワード: TiNiCu系形状記憶合金 / 低熱源発電システム / 熱機械繰返し特性 / 加熱温度 / 最大ひずみ量 / 回復応力 / 非回復ひずみ / 高強度長寿命化

研究概要

本研究は形状記憶合金の形状回復力特性を利用した低熱源発電システム構築のための基礎データを得ることを目的としている。そのため、既設の形状記憶合金用の熱・機械繰返し試験装置を用いて、Ti-Ni-Cu系形状記憶合金を対象にして、Cu濃度を0〜13%の範囲で5種類に変化させた合金を準備して、繰返し変形特性に及ぼす加熱温度、回復応力、非回復ひずみ、仕事量(エネルギ)等のパラメータと疲労寿命との関係について検討し、高強度・長寿命、大容量エネルギを得るための基本特性のデータを求めることを行ってきた。合金に対して、最大ひずみ範囲として0.7〜5.0%の間の5段階、加熱温度として348〜363Kの間の4段階の範囲で種々の組合わせ条件で熱・機械繰返し試験を行った。それらの実験により、各Cu濃度における、回復応力、非回復ひずみおよび仕事量(エネルギ)などに及ぼす最大ひずみと加熱温度の影響を検討した。現在までに得られた結果は、(1)最大ひずみや加熱温度が回復応力、非回復ひずみ、非回復仕事量(エネルギ)に及ぼす影響およびそれらと疲労寿命の関係、(2)Cu濃度が回復応力や非回復ひずみに及ぼす影響と疲労寿命の関係、(3)形状記憶合金の熱・機械繰り返し疲労寿命を支配する因子として散逸ひずみエネルギの提案、等が得られている。これらの基礎データは最終目的の低熱源発電システムの構築には重要である。さらに、本システムの実用化に向けて使用する形状記憶合金のより高強度化、長寿命化を図るための研究を継続する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 佐久間俊雄、岩田宇一、高久 啓、仮屋房亮、越智保雄、松村 隆: "熱力学的繰返し条件下におけるFi-Ni-Cu形状記憶合金の疲労寿命"日本機械学会論文集(A編). 66・4(印刷中). (2000)
• [文献書誌] T.Sakuma,U.Iwata,H.Takaku,Y.Ochi,S.Miyazaki: "Effects of Cu Content on Cyclic Behavior and Fatigue Lives of Ti-Ni-Cu Shape Memory Alloy"Proc. of the 7th Int. Fatigue Congress (Fatigue'99). 3. 1551-1556 (1999)
• [文献書誌] Y.Ochi,T.Sakuma,U.Iwata,T.Matsumura,S.Zhu: "Effects of Cu Content on Fatigue Properties of Ti-Ni-Cu Shape Memory Alloys"Proc. of Int. Workshop on Experimental and Computational Mechanics in Engineering and Materials Behavior (ECM'99). 1. 448-452 (1999)
• [文献書誌] T.Sakuma,H.Takaku,U.Iwata,T.Inomata,Y.Ochi,S.Miyazaki: "Cyclic Behaviors of Fi-Ni and Ti-Ni-Cu Shape Memory Alloys under Thermo-Mechanical and Superelastic Cycles"Proc. of the 6th Int. SAMPE Symposium. 1. 399-402 (1999)
• [文献書誌] H.Takaku,T.Sakuma,U.Iwata,N.Kariya,Y.Ochi,S.Miyazaki: "Effect of Heat Treatment Temperature on Cyclic Behaviors of Ti-Ni and Fi-Ni-Cu Shape Memory Alloys"Proc. of the 6th Int. SAMPE Symposium. 1. 403-466 (1999)
• [文献書誌] Y.Ochi,T.Sakuma,U.Iwata,T.Matsumura,S.Zhu: "Effects of Cu Content and Heating Temperature on Thermo-Mechanical Fatigue Properties of Ti-Ni-Cu Shape Memory Alloys"Proc. of the 2nd Int. Conf. on Advanced Materials Development and Perfomance (AMDP'99). 1. 58-63 (1999)