研究概要 |
本研究は形状記憶合金の形状回復力特性を利用した低熱源発電システム構築のための基礎データを得ることを目的としている。形状記憶合金を上記システムに利用する場合,合金は負荷・除荷および加熱・冷却を組合わせた熱・機械繰返し条件下で用いられるが,この繰返しとともに形状記憶合金の特性である変態温度,変形応力,回復応力およびひずみエネルギ等の変化や,非回復ひずみや2方向性ひずみの出現と入った劣化が生じ,やがて破断に至る。これらの機能変化や特性の劣化特性を把握することや,合金の長寿命化を計ることは機器への応用を考える場合,重要なこととなる。本研究では,形状記憶合金の長寿命化の一つの手法として,異なった冷間加工を与えたTi-Ni-Cu形状記憶合金針金状試験片を対象にして,既設の熱・機械繰返し試験装置を用いて形状記憶合金の機能および疲労特性に与える冷間加工の影響を検討した。得られた主な結果は,(1)冷間加工率の上昇に伴い変形応力の増加,各種変態温度の低下は生じ,その結果回復応力は増加した。(2)その結果,1サイクルあたりに得られるの有効ひずみエネルギは冷間加工率の上昇とともに増加した。(3)機能劣化はマルテンサイト相の状態で生じ,機能の繰返しによる変化は高冷間加工率のものほど安定したものとなった。(4)熱・機械繰返し疲労の全寿命は高冷間加工率となるほど短くなったため,生涯に得られる全有効ひずみエネルギは冷間加工率の上昇とともに減少した。(5)熱・機械繰返し疲労寿命は,1サイクル当たりに減少する回復ひずみエネルギで定義した散逸ひずみエネルギによって評価できることが明かとなった。
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