研究概要 |
本研究の目的は,分子動力学法による原子レベルの数値シミュレーションにより、熱・電気伝導を伴う原子レベルの破壊現象を解明することである。原子レベルのシミュレーション手法により、原子レベルの破壊現象のシミュレーションや、既に実験等で確認された安定な組織構造を再構築する研究が行われて来ている。しかし、局所的な熱移動や、電気伝導を考慮した研究は、国内外を含めてほとんど行われていない。 以上のことを考慮して,本年度は,波動方程式に基づく量子力学計算を行わない、電子の移動を考慮した分子動力学手法の開発を以下に示す手順に従って行った. 1.電子を弾性粒子、原子-電子間を弾性衝突とした場合のプログラム開発 2.上記プログラムを用いた本手法の評価、改良 3.計算手法の最適化による、計算時間の改善 最初,単純に電子を弾性粒子に近似したが,これだけでは原子との質量の違いにより,原子と電子との間のエネルギーのやり取りがほとんど起こらない事が分かり,衝突時のみに,電子の質量を変化させる事により最適なエネルギーの授受を起こさせる手法を開発した.その結果,従来の分子動力学計算シミュレーションから得られる熱伝達係数値に比べ,はるかに実験値に近い熱伝達係数を与えることが出来た.また,電解を与え,電流を流して電気抵抗を調べた所,ほぼ実験値と同じオーダーの電気抵抗を得ることが可能であることも分かった.
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