研究概要 |
骨が力学的環境に適応しその構造,特性を変化させる現象は骨の力学的リモデリングと呼ばれる.本研究では,前年度定式化した時刻歴変化の表現が可能な骨リモデリング構成式の記述精度,妥当性についてさらに検討を行うとともに,実際に汎用有限要素法プログラムに組み込み,その適用性を検討した. まず,過負荷による骨吸収の表現の妥当性について,主に履歴依存性の見地から検討した.すなわち,ひずみ振幅を一定日数毎に3段階に変化させる負荷履歴を数種類選択し,負荷振幅の順序依存性を調べた.その結果,強い刺激を最初に与えると骨吸収を生じて回復しないのに対し,強い刺激の前により小さな刺激を与えて骨の強化をはかっておくと骨吸収ではなく骨形成を予測することがわかった.このことは訓練やリハビリテーションの臨床の場で得られている定性的な知見と一致しており,このような現象の予測に用いることの可能性が示唆された.つづいてひずみ速度依存性について検討するため,同一振幅で負荷ひずみ速度の異なる数種類の刺激に対するシミュレーションを実施したところ,負荷ひずみ速度がひずみ振幅と同様の強い影響を骨再構築に対して持つことが明らかとなった. 次に,定式化したモデルの汎用有限要素法プログラムへの組み込みの適用性を検討するため,まず3次元6面体有限要素1要素からなる有限要素モデルに対し,構成式定式化の際に用いた実験結果と同じ負荷履歴を与え,その再現性を確認した.その結果,定性的にほぼ一致する結果を得,組み込みは妥当性であると判断した.以上の結果を踏まえ,このモデルを大腿骨近位部の有限要素モデルに適用し,骨梁構造を表現できるかどうかを検討した.その結果,このモデルにより骨の最適構造を予測できる可能性が示された.
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