研究概要 |
まず,正常な心臓の一断面における一心周期に渡る磁気標識付MRI画像を用いて,時間と空間での平滑化近似を試みた.本画像では一心周期は24枚の等しい時間間隔の画像からなる.また,この近似では空間は異なる断面のスライス画像を用いた三次元的近似ではなく,一断面画像に限定した二次元的近似であり,着目する点の近傍の変位を線形近似によって見積もった.時間に関しては,MRI撮像法における欠点のひとつとして,一心周期の後半は画像の明瞭さが失われるため,壁内の標識の追跡が困難なことが多い.そこで,一周期の経過後は元と同じ変形状態に戻るという仮定の下に,簡単な形の周期関数を用いて不明瞭な時相区間の変形を推測した.本手法を一領域に適用して,平滑化近似を行った結果,平滑化した領域においては,元来,評価が困難であった一心周期の後半を含めて,滑らかで妥当な変形を再現することができた.また,これまで心臓の収縮機能を評価するのに主ひずみがよく用いられてきた.主ひずみは心臓のひずみ状態を的確に表せるものの,原画像の精度が問題となる.そこで,画像の精度とひずみの精度の関係を,二次元画像の標識点にあわせた三角形の内部に生じるひずみについて誤差評価を試みた.その結果,計測法に起因したり読み取りの際に生じたりする画素の大きさ程度の誤差と三角形の一辺の長さとの比がひずみの誤差として生じることがわかった.さらに,心臓壁を構成する心筋と血管の力学的挙動に関する構成法則について検討した.特に,筋組織の力の発生とそれに伴う収縮挙動を表現できるモデルの枠組を示した.すなわち,全応力を筋組織が非活性状態にあるときの受動的応力と活性化に伴って生じる能動的応力の和で表現した.また,血管については弾性線維・こう原線維に対応する受動的要素と平滑筋に対応する能動的要素からなる層状モデルを考案した.
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