研究概要 |
現在の形状記憶合金の工業的・工学的応用は、単軸での挙動,たとえば簡単な伸び・縮みを用いた1次元的アクチュエーティング挙動に限られている。これに対し、形状記憶合金の基本メカニズムを考えるとき、はるかに複雑でエレガントな機能・挙動が期待できる.すなわち、形状記憶合金の変形メカニズムは、マルテンサイト変態とその逆変態である.この変態現象は、6つの独立成分を持つ応力テンソルと温度、すなわち7つのパラメータにより制御される。本研究の目的は7つのパラメータの役割を基礎的に解明し,形状記憶合金の更なる産業的応用を拡大することである。たとえば三次元アクチュエータや複合デバイス,さらにはこれらを用いた知的材料システムの実現である。このような目的を達成するために、ねじりと軸力からなる種々の組み合わせ負荷を銅系形状記憶合金製の薄肉円筒試験片に与え、その変形挙動を計測した。またマルテンサイト変態により生じる表面性状変化をその場観察できる実験システムを構築し、組み合わせ負荷条件下でのマルテンサイト・バリアントの挙動を観察した。この基礎実験により、成分結晶粒内での,複合負荷条件下でのマルテンサイト・バリアントの発生・成長・消滅の挙動と巨視的変形の間の関係を解明するための基礎的データが収集された。
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