研究概要 |
ダイヤモンド・ライク・カーボン(以降DLCと称する)の基本的な構造は,sp^2のグラファイト構造,sp^3のダイヤモンド構造,アモルファス・カーボン,そして炭化水素系のポリマーといった混成構造体であり,製膜条件によって変化する構成様式の把握が特性評価上重要な点の一つと考えられている.本研究は,部分的に結晶あるいはそれに近い構造を持つクラスタと,同種あるいは異なった構造により構成されるクラスタ間の相互作用を記述する手法を確立し,DLCの強度発現機構の解明を目的に行われた.本年度では,前年度に開発終了したクラスタ間界面に相当する領域のより厳密な相互作用のモデル化を可能とする,強結合近似分子動力学法(Tight binding MD;TB-MD)を用いて,DLC膜のクラスタモデルによる強度評価のための解析を行った.前年度に解析されたネットワークモデルの結果から,強度低下を導く結合形態の組み合わせの同定を行い,変形に大きく寄与するねじり基本変形様式を指摘した.また,初期構造においても,実験結果と良好な一致を示すsp^3比を得ることができた.TB-MDは実空間でも解析できる第一原理計算手法であり,非周期構造の問題を直接的に解析することが可能である.しかしながら,そのために大規模シミュレーションが必要不可欠になり,オーダーN(O(N))の手法を導入した.第一原理計算手法では実行できない大規模シミュレーションを行い,局所環境依存性を考慮した原子間相互作用がクラスタ構造体のような不均質な構造体には必要不可欠であることを明らかにした.
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