研究概要 |
本研究の目的は、低速域から高速域、さらにはひずみ速度で1×10^4/s以上の超高ひずみ速度域でみられる鉄の大きな変形応力のひずみ速度依存の機構を調べることにある。 まず,超高ひずみ速度(〜5×10^4/s)を達成できる高速圧縮試験装置を考案した.本装置は,良く知られたホプキンソン棒装置から入射圧力棒を取り除き,出力棒端面に接着された試験片を打撃棒が直接圧縮変形するシステムである。出力棒は直径が4mmで長さが400mmのタングステン丸棒を使用した.また,ひずみ速度10^2/s付近の中速域では高ひずみ速度域と同様なホプキンソン棒システムを採用したが,得られる出力波形の時間的問題を考慮に入れ出力棒は直径が25mmで長さは3mと非常に長いものとなった. ひずみ速度1×10^3〜5×10^4/sの領域で高ひずみ速度試験を行うには,実験装置以外にも試験片の形状や大きさも制約を受ける.本実験では,直径と長さがそれぞれ1mm×1mm,1.5×1.5mm,2.0mm×2.0mmの鉄の円柱形試験片を使用した.また,ひずみ速度10^2/s付近の中速域では高速域におけるような厳しい制約を受けることはなく,直径,長さ共に10mmまたは15mmの試験片を採用した. 実験は,高ひずみ速度4×10^3/Sから5×10^4/Sの領域を中心に行い,広範囲ひずみ速度域における変形応力のひずみ速度依存性を調べた.さらに,鉄の高ひずみ速度域における変形応力のひずみ速度依存の機構を,鉄の活性化エネルギーE(τ)を用いて比較、検討した.その結果,ひずみ速度1/S程度の低速域からひずみ速度およそ2×10^4/Sの間の変形応力のひずみ速度依存の機構は転位がキンク対を形成する際の単一の熱活性化過程で律速されているが,それ以上の超高ひずみ速度領域においては,他の律速機構が支配的になるのではないかと考えられる.
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