研究概要 |
平成11年度は,疲労試験方式として片持ち回転曲げ疲労試験を採用し,回転曲げ疲労試験中における最大引張応力負荷時の試験片外周上の実応力分布測定の高速化を達成した.そして応力除去焼なましを行った炭素鋼(S45C)試験片を使用して,疲労試験中における実応力分布の測定を行い,実応力分布から表面疲労き裂の発生時期および発生位置の検出が可能であることを明らかとした.さらに外周上の一個所に円孔の人工欠陥を設けた試験片を用いて実応力分布を測定し,表面き裂の検出限界についても明確にした. そして平成12年度は,ショットピーニング処理を行った炭素鋼(S45C)試験片を使用して疲労試験中における試験片外周上の実応力分布を測定し,疲労過程における圧縮残留応力の減衰状況および実応力分布の変化から表面き裂の発生位置,時期およびき裂長さを明確に検出できることを明らかにした. 平成13年度は,疲労過程において内部疲労き裂を発生する材料と表面改質法を選択し,パーライト基地球状黒鉛鋳鉄にショットピーニング処理を行った試験片表面外周上の実応力分布の変化から内部疲労き裂の検出が可能であるか否かを検討し,内部き裂の発生位置および時期を検出できることが判った. 本研究の成果は以下の通りである. (1)表面き裂が発生するとき裂口縁の引張応力は解放して大きく減少し,実応力分布はき裂発生位置を中心としてV字の形状を示す. (2)内部き裂が進展してその上端が試験片表面に接近すると,引張荷重を担う実断面積の減少とき裂先の特異応力場の影響で表面に発生する引張応力は増加し,実応力分布は内部き裂発生位置を中心として山型の形状を示す. (3)試験片外周上の残留応力分布は表面き裂,内部き裂が発生していても顕著な変化は見られず,残留応力分布からはき裂の検出は行えないことが判った.
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