研究概要 |
一般の接着継手では,モードI(はく離)荷重のみならず,モードII(せん断)荷重も同時に作用する.その結果,き裂先端には二つのモードが同時に作用することになる.本年度の研究では,この混合モード下での接着剤層中のき裂進展挙動に焦点を当て,研究を進めた.これまでの研究でモードI荷重下では,繰り返しエネルギ解法率範囲(ΔG_I)が大きいところでは凝集破壊となるが,ΔG_Iの減少に伴なって破面の一部に界面破壊が現れ,混合破壊の様相を呈し始めることが分かった。さらにΔG_Iが減少すると,全面凝集破壊となり,やがてき裂の成長は止まる。一方,モードIIおよびモードII成分の多い混合モード下においては,被着体表面をサンドペーパとアセトンによる脱脂のみ行ない,特別な処理を行なわない場合(界面強度は低い)でも,静的荷重下では全て凝集破壊であった(荷重速度の遅いモードI下では凝集破壊)。純モードII下での破壊じん性値G_<IIC>はモードI下のG_<IC>より4〜6倍大きい。純モーIIからモードI荷重下での混合モード下での破壊じん性値を見積もる,言い換えれば混合モード下での破壊クライテリアを簡単な台形式により提案した。 モードIIおよびモードII成分の多い混合モード下での疲労き裂進展時でも概ね凝集破壊が主たる破壊様相である.混合モード下では界面強度を高めるため,重クロム酸処理など,表面処理の有無に関わらず同じ傾向を示す。すなわち,接着剤層の破壊形態の違いがモードII成分により大きく影響されることが明らかとなった。混合モード荷重下でのき裂進展挙動を,モードI,II荷重下でのき裂進展特性の重ね合わせにより見積もる手法を提案した。
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