研究概要 |
初年度に当たる今年度は主としてAFM内引張り試験装置の設計および製作を行った.とくに設計に際しては,有限要素法解析を用いて試験片形状およびPZTアクチュエータ用ハウジングケースの形状寸法を決定した. 試験片標点部の形状寸法は幅300μm,長さ2000〜3000μm,厚さ0.2〜20μmであり,引張り試験中における曲げ,ねじりの影響を最小限にするため,試験片標点間距離を比較的長く設定している.なお,本研究での主目的が薄膜材料のヤング率およびポアソン比の測定であることから,試験片形状設計におけるFEM解析は弾性解析のみとした.PZTアクチュエータ用ハウジングケースの設計においては,試験片軸上に引張り荷重が負荷される構造にする必要がある.しかし,既存のAFM装置の寸法の制約上,アクチュエータ自体を試験片軸上に設置することが極めて困難であった.そこで本研究では,新たにてこ式ヒンジ構造を有するハウジングケースを提案する事により,この種の問題を解決した.具体的には試験片軸に対して平行にアクチュエータを設置し,アクチュエータに変位が与えられるとその変位の約2倍の変位が試験片軸上に加わる構造となっている. 一方,装置システムを作製する上で最も重要なことは,装置自体の重量を可能な限り小さくすることである.これは装置自体がAFM装置のPZTアクチュエータ上に直接取り付けられるためである.本研究では,ハウジングケース取り付けベースと粗動用マイクロステージとを一体化することにより,寸法,重量の低減を図っている. 今後は,マイクロマシニングにより作製した微小単結晶シリコン試験片を用いて予備試験を実施した後,DLC等の薄膜材料に対する試験を実施する予定である.
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