研究概要 |
複合材料製品の外観検査工程での欠陥検出を自動化するシステムの開発をめざし,画像処理で用いる情報と生体の視覚情報処理機構に基づく画像認識アルゴリズムを用いて欠陥のための実用的な診断システムの構築を検討した.この方法は,欠陥として検出する対象物に対する熟練検査員の経験知能の抽出を目指し,欠陥検出に重要な評価因子として,対象物の画像属性に対し検査員の官能特性を計測し,そのデータに基づいて各画像属性の支配パラメータに対する人間の検出感覚曲線を算出し,この数量化統計量を自動診断のエンジン部に埋め込み高速でかつチューニング可能な自動診断システムを開発するものである.このため,水槽用埋め込みFRPタンクの外壁材を用いた製品の一部をレプリカとして抽出した画像により,欠陥の画像特性をサイズ,形状,濃淡の3属性に絞り,これらの図形属性を人工的に配分した官能検査用の調査票を作成し,この検査表を用いた恒常刺激感能検査実験を実施して人間のこれらの画像属性に対する反応特性を解析した.解析は各属性に対する検出反応は1次元正規分布を仮定し,属性パラメータ変量に対する反応曲線を導出した.恒常刺激法に基づく実験結果のデータを用い検出分布曲線のパラメータの推定は最尤法により求められた.また,これら3属性の交互作用を見るため,3属性中の2属性を選びそれぞれの特性値を振りながら人工的に作成した検査画像を作成し2属性混合の恒常刺激法による調査票を作成し,同じく2因子に対する検出応答実験を行った.この実験結果から2属性間の共分散と相関係数を推定した.また,こうして求めた各画像属性に対する検出応答曲線から検出確率を指定した検出閾値の決定を可能にした.こうした欠陥の画像属性に対する人間の検出応答特性を評価し,各画像属性の検出閾値を自動検出システムの欠陥認識アルゴリズムに組み込んだ自動システムを試作した.このシステムの特徴は,入力した画像属性評価値の閾値処理により高速に欠陥診断が出来ることと検出時の誤判断確率が定量的に評価できる点である.
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