研究概要 |
今年度は次の2つの課題について研究を行った.これらの研究で得られた新たな知見等は以下の通りである. 1.耐熱性構造材料層と圧電セラミックス層で構成された複合平板の過渡的なセンサ機能の発現に関する研究 二層複合平板の三次元非定常圧電熱弾性逆問題の数値シミュレーションにおいて,過渡状態のある時間で解が不安定になる問題点を解決するために,順問題の解析を行ってその原因を詳細に検討した.その結果,加熱初期段階からの時間経過に伴って,圧電セラミックス層の応力が圧縮から引張に反転し,これに起因して惹起された電位も正から負に反転することが示された.逆問題では入力データとして電位を与えているが,入力データにおいて電位の符号が反転する時間に少しでもずれが生じると,複合平板は物理的に不合理な応力状態に陥るために解が不安定になることが明らかになった.そこで,逆問題において,電位の符号が反転する時間を検出し,その付近で時間差分を大きく取るようにアルゴリズムを改善したところ,安定な解を得ることができた.これによって,複合平板モデルにおける過渡的なセンサ機能の発現が可能になった. 2.平面応力に基づく近似解析に関する研究 複合平板においてセンサ機能の過渡的応答性を確保する為には計算時間を大幅に短縮する必要性がある.そこで,昨年度の研究で提案した平面応力に基づく近似解析法を適用し,温度場と電気場は三次元状態の下で,応力自由境界の場合について圧電セラミックス円板の熱弾性問題を理論解析した.さらに,解析結果に基づいて数値計算も行い,得られた近似解を厳密な三次元解と比較し,近似解の精度について詳細に検討した.その結果,板厚が半径に等しい円板の時でも最大誤差は約5.9%程度であり,近似精度は良好であることが示された.
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