研究概要 |
デジタルな,著作権情報を「透かしデータ」として,3次元形状モデルデータ内に第三者に気づかれないよう密かにかつ除去不能な形式で埋め込み,必要に応じてこの透かしデータを抽出できる技術(「電子透かし技術」)を開発することによって,形状モデルの著作権保護を実現しようというのが本研究の目的である. H12年度は,商用のポリゴンモデリングソフトウエア(要求設備)を用い,実際規模のポリゴン・ソリッド・サーフェースモデルデータを夫々作成し,透かし情報埋込み→透かし入りモデルへの座標変換・形状修正等の操作→透かし情報の抽出,といった一連の処理を実施した. 透かしデータの残存性や埋込み容量,埋め込みで生ずる形状誤差などの性能を定量的に評価した結果,ポリゴンモデルのアフィン変換に対し,透かしデータが100%保存されること,透かし埋め込みによって生ずるモデル誤差の許容値を満たした透かし埋め込みが可能であること,局所的な座標値変更に対しても,低解像度レベルに埋め込まれた透かしデータは残存する頑強性をもつことなど,良好な特性があることが明らかになった.その反面,モデルの局所的な切り取り操作に対する耐性については,不十分であることが判明した. さらに,開発透かし手法を,「2次元ベクトル型図形データ」への電子透かし手法へも適用できるよう改良し,電子地図データに対する周波数領域での透かし埋め込み・抽出実験をも実施した.その結果, ベクトル型図形データの表示上の品質を保ちつつ,著作権保護などに必要な透かしデータ量を埋め込むことが可能であり,さらに頂点座標値へのランダムノイズ重畳に対しても,埋め込まれた透かしが十分な耐性を持つことを確認できた. 今後は,モデルの局所的切取りなどの操作に対しても,充分な耐性を有する透かし埋め込み処理が可能なアルゴリズムへの改良が必要である.
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