600m/s超高速・ナノメータオーダ超精密加工機械の開発に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11650115
• 研究機関: 茨城大学
• 研究代表者: 清水 淳 茨城大学, 工学部, 助手 (40292479)
• 研究分担者: 周 立波 茨城大学, 工学部, 助教授 (90235705) ; 江田 弘 茨城大学, 工学部, 教授 (60007995)
• キーワード: 超高速加工 / 超精密加工 / 研削 / 塑性流動 / 塑性波 / ひずみ速度 / 加工変質層 / 分子動力学

研究概要

本研究は、延性材料加工における加工変質層の極小化と表面精度の最良化を目的とし、材料の静的な塑性伝播速度を超えた超高速領域で加工が行なえる装置および加工技術の開発を行なった。その領域では、材料の硬脆化によるき裂発現を伴う可能性が高く、それを回避するためのナノメータオーダ切込み送りシステムの搭載が必須となる。これにより超精密デバイス用金属材料加工の高品質化と高能率化が期待できる。
平成12年度は
〔I〕アルミニウム材料を用いた静的な塑性伝播速度領域における加工形態の評価
〔II〕純アルミニウムを対象とした静的な塑性伝播速度領域における加工シミュレーション
〔III〕研究成果の公表および研究成果報告書の作成
を行った。以下、研究成果を記述する。
〔I〕では、ダイヤモンド砥石、円盤状工作物(純AlおよびAl-Mg合金)の双方を周速度50〜200m/sで回転させ、工作物材料の静的な塑性伝播速度領域(相対速度で達成)で研削し、加工形態を評価した。表面・断面観察および粗さや硬さ測定を通じ、工作物材料の静的な塑性伝播速度を越えた加工速度では表面精度が向上し、かつ加工変質層が減少することを証明した。
〔II〕では、ダイヤモンド砥粒によるAl単結晶研削の分子動力学シミュレーションを、塑性伝播速度領域で行ない、材料除去形態を評価した。切りくず排出形態や応力状態、加工エネルギー等の評価を通じ、材料の静的な塑性伝播速度を越えた加工速度では塑性流動の抑制、切りくずの円滑な排出、加工エネルギーの減少が起こり、加工変質層の減少と表面精度の向上が可能であることを証明した。
〔I]〔II〕より超高速・超精密加工の有効性を確認した。
〔III〕では、成果の一部を国内諸学会および国際会議(ASPE)等で公表した。学術誌論文としてPrecision Engineering誌に投稿した。最後にこれまでの成果を研究成果報告書としてまとめた。

研究成果

• [文献書誌] 清水淳,江田弘,大村悦二: "宇宙環境下における飛しょう体鏡面劣化現像のシミュレーション(第1報)-損傷過程の原子挙動と損傷に及ぼす表面性状の影響-"精密工学会誌. 66・4. 624-629 (2000)
• [文献書誌] M.Ii,H.Eda,T.Imai,M.Nishimura,T.Kawasaki,J.Shimizu,T.Yamamoto and L.Zhou: "Development of High Water-Content Cutting Fluid with a New Concept Fire Prevention and Environmental Protection"Precision Engineering. 24・3. 624-629 (2000)
• [文献書誌] 江田弘,清水淳: "分子動力学による固体の摩擦・摩耗現象の解析"トライボロジスト. 45・9. 661-666 (2000)
• [文献書誌] L.Zhou,H,Huang,J.Shimizu and H.Eda: "Automated Robotic System for Jet Engine Overhaul-Process Development and Enhancement for Honeycomb Repair-"精密工学会誌. 66・12. 1895-1900 (2000)
• [文献書誌] K.Ramesh,S.H.Yeo,S.Gowri and L.Zhou: "Experimental Evaluation of Super High-Speed Grinding of Advanced Ceramics"Int.J.Advanced Manufacturing Technology. 17・1. 87-92 (2001)
• [文献書誌] L.Zhou,J.Shimizu,A.Muroya and H.Eda: "Material Removal Ultrahigh Speed-Material Removal Mechanism Below and Beyond Plastic Propagation Speed-"Proc.Int.Conf.ISAAT2000 (Advances in Abrasive Technology III), Hawaii. 438-443 (2000)
• [文献書誌] J.Shimizu,H.Eda,L.Zhou,A.Muroya and Y.Nakazawa: "Microscopic Analysis of Material Deformation in Ultra High-Speed Grinding Process"Synopsist of Int.Conf.ITC2000, Nagasaki. 50-50 (2000)
• [文献書誌] J.Shimizu,H.Eda,L.Zhou,T.Asano and Y.Nakazawa: "Microscopic Analysis of Friction Phenomena in Surface Observation by Atomic Force Microscope"Synopsis of Int.Conf.ITC2000, Nagasaki. 454-454 (2000)
• [文献書誌] 江田弘 他多数: "「改訂6版金属便覧」(日本金属学会編)"丸善. 1182 (2000)