研究概要 |
結晶格子表面の原子配列は,結晶自体が無応力でかつ格子欠陥がなければ,高い2次元的な周期性と直線性を持つものと考えられる.この場合,結晶が決まれば,ある原子配列(=結晶方位)とほかの原子配列のなす角も一定で安定し,かつユニバーサルなものと考えられる.したがって,原子配列間のなす角度を認識し抽出できれば,これは一種の量子化された(あるいは天然物起源の)単一角度基準となりうる.さらに,原子配列の高い直線性と2次元的周期性を組み合わせれば,デジタル化角度基準を作製できる可能性がある.走査型トンネル顕微鏡(STM)は,結晶格子表面の原子像を空気中でかつ実時間で捕捉可能である.したがって結晶格子の原子配列そのものを角度基準,STMを検出ヘッドとすれば,結晶方位間のなす角を基準とする単一角度基準およびデジタル角度基準を構成可能であると考えられる. 本研究では,直動性の良いスキャナを持つSTMヘッドと精密な試料回転台を組み合わせた結晶格子配列のなす角を基準とする角度割り出し盤を開発した.高配向焼結グラファイト(HOPG)を基準結晶としHOPGの隣接原子配列のなす角60度を割り出し,これを精密に校正されたポリゴン鏡の角度と比較した.両者の結果はほぼ一致し,結晶格子表面の原子配列を基準とする角度測定の可能性を確認した.
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