研究概要 |
本研究は,黒鉛,ホウ素,チタンの混合粉から成る圧粉体にYAGレーザービームを照射して炭化ホウ素とホウ化チタンの複合セラミックスを合成することを目的としている.炭化ホウ素は硬度が高く,研磨材としての応用は考えられているが,難焼結材料であり,靭性も高くないこともあって,その性質を十分に生かして利用されているとは言い難い.近年,炭化ホウ素とホウ化チタンの複合セラミックスを合成することにより,靭性を向上させることが行われている.しかし,これらのセラミックス粉は高硬度であるため,圧粉が困難である.本研究では,黒鉛,ホウ素,チタンの混合粉を圧粉するので,セラミックス粉に比べ,圧粉が容易であり,多様な製品形状に対応することができる. 昨年度は,複合セラミックスを合成するための原料粉末の混合比について,主に実験を行った. 本年度は,黒鉛,ホウ素,チタンの混合粉にレーザービームを照射する際の雰囲気を変えて実験を行った.その結果,真空中で得られた合成物の硬度は,大気中で得られた合成物の硬度に比べて高い値が得られた.このようにして得られた合成条件をもとにして,複合セラミックスから成るマイクロパイプの造形を行った. 次に,基盤上で成膜を行った.基盤材料として炭化チタンを使用し,基盤上にホウ素粉末を塗布する.基盤上方からレーザービーム走査を行うことにより,基盤上にホウ化チタン膜を合成した.このようにして合成したホウ化チタン膜を切削工具として,炭素鋼の外周切削を行った.その結果,ホウ化チタン膜工具により,炭化チタン工具と同程度の工具寿命が得られた.さらに,膜が切削中に剥離することはなく,膜と基板材料の密着性が切削加工に耐えうることもわかった.
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