研究概要 |
慣用のツイストドリルの対し,心厚を3倍,溝断面積で約半分とした本ドリルはS45C,S50Cの穴あけで優れた特性を示す.炭素含有量を変えたステンレス鋼,SCM400,工業用純アルミに適用した結果次の点が明らかとなった.ステンレス鋼は難削であるがS50Cに比し回転数,送りを小さくすれば穴あけ可能.慣用ドリルでは0.03%の炭素含有量で極端に工具寿命が短いが,本ドリルでは逆に含有量の少ないものより長寿命となった.排出切りくずは遷移折断形,微細形は生じず,切りくず形状からは排出性良好である.円すいらせん形,長ピッチ形ともS50Cとは少し異なった形状である.純アルミではS50Cと比べ回転数は同じでよいが,低送りでないと100mm穴あけ不能となった.切りくず形状は低速低送りのときに遷移折断形が生じたが,ほとんどの場合円すいらせん形から連続して長ピッチ形に変化した.それぞれの切りくず形状はS50Cと同様である.高速,高送りの場合長ピッチ形に変った後次第に切りくずが厚くなり,切りくず詰まりとなり穴あけ不能となった.S50Cおよび以上のステンレス鋼,純アルミの特性は被削材の可塑性とその温度依存性,加工硬化性,工具との親和性による.SCM440の場合生成切りくずの形態はS50Cと同じであるが,微細形切りくずが多く生じた.トルク,スラスト,水平面内力の測定結果で,急増現象や変動の大小に被削材と切削温度(穴あけ深さ)によって異なる特徴が認められた. 同一の慣用ドリルで長さを変えて寿命試験を行った結果,長さ100mmでは外周エッジ部で磨耗幅が最大になる通常の結果になったが,長さ58mmで外周エッジから少し内側で最大磨耗幅を示し,本ドリルと同じ形態となった.これは本ドリルと同じく高剛性で歩行現象が起こりにくくなったためと考えられる.
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