『NCプログラムを必要としない次世代自律加工セルの試作』に必要な機能について研究を実施して以下の成果を挙げた。 1.加工プロセスや加工精度を予測するシミュレーション手法 目標の仮想加工シミュレータを開発し、加工中に切削力が急増する部分や加工精度が要求精度を満足しない部分を加工前に把握することが可能となった。自律加工セルにおいては、切削条件や工具経路の問題点を事前にチェックし、切削異常を回避するための機能が提供できる。 2.切削条件の変更を加工途中で可能にする実時間工具経路生成手法 倣い加工の原理を計算機内に再現して、実時間で工具経路を生成する仮想倣い加工シミュレータを開発した。計算機内の仮想トレーサと仮想マスタモデルの干渉チェックを厳密に行ない、荒加工から仕上げ加工に至るまでの工具経路生成が、走査線加工及び等高線加工で実現できるようになった。実時間で生成された工具経路情報を、NC制御装置が提供するHSSB(High Speed Serial Bus)を用いて転送し、実際のエンドミル加工でその機能を検証した。 3.加工中の切削異常を回避する切削力適応制御手法 加工状況を切削条件に反映させるために必要なフィードバック機能として、加工状況のモニタリングと加工条件修正アルゴリズムを検討した。モニタリングでは、特殊なセンサを必要とせずに加工中の切削トルクや切削力を把握することを目標に、NC制御装置から主軸モータ及び駆動モータの駆動トルクを検出することを試みた。主軸回転数や駆動方向による摩擦トルクの補正などが必要であるが、切削トルクや切削力が推定可能であることを確認した。また、モニタリングした切削トルクを反映しながら実時間で切削条件を修正するアルゴリズムを提案し、仮想加工シミュレータを利用してその機能を検証した。先の実時間工具経路生成機能により、主軸回転数や送り速度だけでなく切込みやピックフィードの修正も可能で、切削異常を回避する自律的な機械加工が実現できる。
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