スポット溶接は品質の安定した生産性のある溶接法として、自動車や車両などの薄板構造物の組立工程に広く用いられている。これらの構造物に配置されているスポット溶接の間隔や点数は経験によることが多く、通常は安全性、信頼性の観点から過剰なスポット溶接が施されている。本研究では、多点スポット溶接構造物におけるスポット溶接の最適配置を検討するために、板厚、接合径、スポット溶接の間隔や配置が強度に及ぼす影響を応力解析と引張りせん断試験から調べ、さらに非破壊計測法を利用した強度推定法を試みた。得られた主な結果は以下のとおりである。 多点スポット溶接部材の強度は、接合径、板厚、板幅、スポット溶接の配置に大きく依存し、スポット溶接の配置を3種類に分類した基本パターンの強度から推定できることが明らかになった。3種類の基本パターンは横1列にスポット溶接を配置するもの、2列に配置するもの、千鳥状に配置しているものであり、それぞれパターンにおける支配因子は以下のようになることが応力解析と強度試験から示された。横1列のパターンでは、隣り合うスポット溶接の間隔が大きな支配因子で、応力分布、破断強度から単点スポット溶接を並列にならべたものとして推定できる。2列に配置したものでは、スポット溶接の横方向間隔の影響は横1列の場合と同じであるが、さらに列(縦方向)の間隔が曲げモーメントに影響し、列間隔約35mm以下ではその影響が大きくなると共に、その強度は単点スポット溶接との関係から定量的に推定できることを明らかにした。また、千鳥状に配置したものでは、上記二つのパターンの複合効果によるもので、この推定式も導くことができた。これらの結果から、最適配置を求めることは可能となったが、スポット溶接を配置するスペースは構造物の種類によって異なるために、これを拘束条件と考えると、最適配置は構造物ごとに考える必要があった。また、電極移動量を利用した非破壊インプロセス計測では、散りの発生の検知および発生限界の設定が可能となったが、プロセスの制御にはさらに応答性のよい計測技術の開発が必要となった。しかしながら、電極移動量を利用すると、接合径推定の可能性があることから溶接中の強度推定、強度を確保するために溶接間隔の調節にも利用できることが明らかとなった。
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