研究概要 |
シリコンを用いたマイクロすべり機構の接触・摩擦特性評価として以下の研究を進めた. (1)表面吸着力の測定 2面間に作用する表面吸着力は微小物体の間の摩擦力に大きな影響を及ぼす.そこで,傾けて設置したシリコンウェハ上にシリコンチップを置き,ウェハ面の放線方向に振動を加えたときに滑り出すときの加速度条件からシリコン表面間に作用する表面吸着力を調べた.その結果,吸着力はみかけの接触面積に正比例せず,その0.68乗に比例することを明らかにした.さらに,しゅう動に伴う帯電によっても吸着力が大きくなり,例えば308μNの吸着力が616μNにもなることを明らかにした. (2)微小摩擦力の測定 原子間力顕微鏡を転用した摩擦力顕微鏡により,シリコン基本面方位の摩擦力測定を行った.(100),(110)および(111)面のチップを準備し,これらとAFMチップとの間の摩擦力分布を測定した.わずかながらこれら面方位による特性の違いが見られた.今後,法線力等の条件を変えた実験を行う.また,これと別に微小摩擦力測定装置の開発を行った. (3)真実接触面積の測定 みかけの接触面積を種々変えた微小接触部の電気抵抗を測定することで真実接触面積の推定を試みた.接触部にはそれぞれ,便宜上,金をコーティングしたシリコンを用いた.みかけの接触面積が140μm^2以下では接触抵抗が大きくなる傾向が見られたが,逆に接触面積が大きい場合は安定した接触抵抗が得られた.これを応用してラップ仕上げ面や梨地のシリコン表面同士の真実接触面積の推定を今後進める.
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