研究概要 |
シリコンを用いたマイクロすべり機構の接触・摩擦特性評価として以下の研究を進めた. (1)雰囲気が表面吸着力に及ぼす影響 従来行ってきた大気中での表面吸着力測定を真空容器内で行うことで,雰囲気が及ぼす影響を調べた.従来と同じく,傾けて設置したシリコンウェハにチップを置いて振動を加え,これが滑り落ちる時の加速度条件から表面吸着力を求めた.見かけの接触面積を0.03-6mm^2の範囲で変えたチップ(酸化膜付き)を準備するとともに,窒化膜付きのチップ,およびフッ酸処理で酸化膜を除去したチップも準備した. 実験の結果,まず,大気中では見かけの接触面積の1.2乗に比例した表面吸着力が,真空中では見かけの接触面積に正確に比例し,常に大気圧下の場合に比べて小さくなることがわかった.また,表面が酸化膜に覆われている場合に比べ,酸化膜無しのチップの吸着力が半分程度まで小さく,さらに窒化膜付きのチップではさらにその半分程度まで小さくなることがわかり,微小機構設計への指針を明らかにした. (2)テクスチャの作成と摩擦方向性の付与 シリコンの異方性エッチングを利用して表面に周期性のある規則形状(テクスチャ)を作成し,摩擦特性の評価を行った.まず,ミラー指数(1.16 1.16 1)の基板上に幅3μmピッチ3μmのマスクを設けてエッチングを行い,最大深さ0.3μmの非対称鋸歯状断面を作成した.面圧を調整しながら往復しゅう動に伴う摩擦特性を調べるための3軸力測定システムを製作し(最小分解能1.2mN),微小面圧下での摩擦係数の測定を行ったところ,微小面圧時に問題となる摩擦係数の増大をテクスチャにより大幅に抑制することができることがわかった.さらにこれとポリプロピレンのような柔らかい材料と組み合わせることで,方向によって摩擦係数を2倍程度違えることが可能なことがわかった.
|