研究概要 |
環境保護の観点から,油剤を使用しないセミドライMQL加工やドライ冷風加工などにおいて,空気の加工点の冷却メカニズム,加工熱と供給空気冷却との熱収支限界の基礎関係を把握するための実験装置と解析プログラムを作成し,またCBN研削により実際の研削データにより基礎的に確認した.具体的には,空気で加工点の冷却を行う場合の除熱限界量を,下記の単純化した単相流熱伝達モデル実験と解析を行った.加工点の発熱現象を単純化および理想化するため,被削材に平板のS50CやSCM435H(HRC50)を用い,研削加工による発熱現象の変わりに,被研削エネルギから想定した発熱量を,赤外線加熱器で被削材表面に過熱した.このとき,通常の赤外線では,スポットで加熱をすることが困難であることから,赤外線加熱器のレンズ集光部に石英光ファイバーを用いて,スポット(φ6mm)で1000℃の加熱ができるようにした.その加熱点に対して,空気冷却装置で生成した圧縮空気(温度+30〜-60℃,流量0〜700NL/min,圧力0.1〜0.7MPa)による衝突噴流を,供給条件を変化させて伝熱面にあてて冷却し,そのときの温度変動や定常温度状態を,被削材伝熱面に配置して埋め込んだシース型伝対(φ 1mm)によって測定した.ここで,発熱点の空気除熱伝熱関係を,差分法を用いて逆問題解析をするプログラムを作成し,種々の供給条件における冷却特性を求められるようにした.また,CBNホイールでSCM435H(HRC50)を単位時間あたり研削しろ断面積90〜1800mm^2/minで冷風円筒研削を行い,加工点温度,研削中の工作物表面温度,工作物の表面組織状態,硬さ分布,残留応力分布を測定し,基礎的研削発熱量の測定と各項目に対して0.2Nm^3/min,-40℃の冷風で油剤冷却と同じ効果があることを確認した.
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