研究概要 |
環境保護の観点から,油剤を使用しない加工を構築する必要がある.昨年度は,単層流の高速空気による加工点の冷却メカニズム,加工熱と供給空気冷却との熱収支限界の基礎関係を把握した.本年度は,冷却性をさらに高めるため,高速空気流の中に水滴ミストを混入させ,ミスト添加による乱れの増加や潜熱に起因する熱伝達率の増加を目的とし,基礎実験と解析を行った.具体的には,空気流および水滴ミスト流での簡易的な加熱点の冷却状態を観察する実験装置を試作し,空気流と水滴ミスト流の流速をレーザドップラー流速計(LDV)で測定し,加熱点における液滴や液膜の状態をCCD高速カメラによって観察した.また,液滴径は,液滴採取シャッターにより液滴を採取し,カメラ撮影を行うことによって求めた.加熱点は,ヒータによって電圧制御され,定常状態にし,熱電対から外挿値により加熱表面温度を,フーリエの法則を用いて壁面熱流束を求めた. これらの結果,10m/s程度の遅い流れにおいては,空気単層流では6x10^2/m^2Kであるが,水滴量4L/hでおよそ30倍(1.2x10^4/m^2K),水滴量8L/hでおよそ50倍(3.0x10^4/m^2K)であった.水滴を添加させたことによる気相の攪乱効果よりも液膜形成による潜熱効果が大きいことが観察からわかった.水滴量0.3L/hでは,空気単層流の約3倍であり,水滴量に比例して冷却性効果があった.また,水滴速度が速い方が,熱伝達率が高くなることがわかった.また,シュールトムソンを利用し,空気温度を下げる検討を行ったが,空気の圧力(流速)が低下することから,好ましくないことがわかった. 以上から,空気流に水滴を添加することによって冷却性を高めることができるが,冷却性を高めるためにはある程度以上の水滴量が必要であることがわかった.また,供給速度を高くした方が冷却性を高くできることがわかった.
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