研究概要 |
高齢者の作業負荷や生産性などを事前に評価できるシミュレータの開発を目的とし,まず初年度においては,関連のシミュレータに関する現状調査,ならびに高齢者の技能および健康に関する特性を検討するための実験を行った。それらの結果は次のようにまとめられる。 (1)生産システムの評価シミュレータには,生産工場を3次元コンピュータグラフィックスによって可視化し,各要素の物理的な干渉チェックや工程チェックなどが行えるものがある。一方,コンピュータグラフィックスによる人体モデルには,実際の人体寸法に基づいた自由度の高いものがあり,一部のタスク評価や人間工学的評価の可能なものがある。しかし,日本人の寸法や能力に基づいたモデルはなく,また,一般に人間の生理特性や心理特性,さらに行動特性などを扱えるモデルは皆無と言ってよい。 (2)人間の生理的特性として皮膚血流量を取り上げ,種々の条件のもとに実験を行って,上肢作業のつらさと皮膚血流量の関係を定式化し,人体モデルに組み込むことを可能とした。 (3)健康の一指標として皮膚血流量を取り上げ,それを効率的に増加させるような上肢,下肢,および胴体の運動について実験的検討を行った結果,末梢の血行をよくする運動が存在することが確認された。 (4)単調作業における長時間の立ち作業を評価する方法として,脹ら脛のむくみを計測する技法を考案し,それに基づく計測装置を開発した。 (5)心電図計,呼吸計,眼球運動計測器などを用いて,技能の習熟と生理的特性変化の関連を調べる実験を行った結果,技能の習熟とともに種々の生理的特性が徐々に変化することが確認された。
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