研究概要 |
本研究では,方向をそろえたSiC(炭化けい素)ウイスカー砥石の開発を行うとともに,この砥石の性能評価を行った.その結果,仕上げ面粗さ16nmRy,研磨比(研磨量/砥石摩耗量)2000という値が得られた.また加工変質層も小さいことがわかった. 本研究では,このウイスカー砥石の特徴を生かして,円筒内面・外面加工用のホーニングに応用した.実験装置には,CNCフライス盤を用い,加工材としてSKD11(HRC60)を使用した. 11年度は,シリンダー内面のホーニングについて実験を行ったが,本年度の実験では,主に次の2点について行った。(1)加振器を用いて,軸方向に振動を与えその効果(加工能率の向上,砥石の目づまり防止等)について検討すること,(2)加工材料の周速度を低くして交差角を大きくとれるようにするとともに,被振動体であるホーン側を軽量にし,振動数及び振幅の範囲を広く取れるようにすることのために,小径丸棒材を用いて外周ホーニング加工を行った。これにより交差角を最大で70°まで取る事ができ,また振幅も0.1mm程度まで取ることができるようになった。 実験結果について,交差角13°〜70゜までの実験結果では,70゜の場合が最も加工能率がよく,また仕上げ面粗さについても他の場合に比べて,やや良いという結果がえられた。 振動数を100,200,400,800Hzと変化した場合において,100Hzの場合には振動を与えない場合に比べ悪い結果となったが,200,400,800Hzと振動数が大きくなるに従って,加工能率が上昇する傾向がみられ,特に800Hzにおいてはその傾向が顕著であった。しかし仕上げ面粗さに関しては,殆ど加振による効果はみられなかった。 また,加工後の砥石表面と加工物の表面状態について,それぞれ走査形電子顕微鏡(SEM)およびレーザ干渉顕微鏡において観察を行った。砥石表面については,振動を与えなかった場合に比べ,加振の場合の方が目づまりが少なく,その効果が現われたものと考える。加工物表面については,かなり良い仕上げ面の状態を3次元的に観察することができた。 来年度については,加振の効果について更に調べることと,CBN(立方晶窒化ホウ素)砥石につしても実験していくことを予定している。
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