研究概要 |
窒化炭素は,β-C_3N_4と結晶化すると,理論的にはダイヤモンドよりも硬いと言われ,将来の耐摩耗膜として期待されている.一方,研究代表者は,イオンビームミキシング法で窒化炭素膜を成膜し,窒化ケイ素ピンとの摩擦特性を測定したところ,低荷重・低すべり速度において,窒素雰囲気中であれば0.009という無潤滑下では考えられないような超低摩擦が得られることを発見し,1998年コーティングの国際会議で発表した. そこで,イオンビームミキシング法による窒化炭素膜の超低摩擦材としての新機能展開を図るために,イオンビームミキシング装置により,シリコン基板上にカーボンをイオンビームスパッタリングしながら,窒素イオンビームを照射することで,窒化炭素膜を成膜した. 初年度に,イオンビームミキシング装置により,シリコン基板上にカーボンをイオンビームスパッタリングしながら,窒素イオンビームを照射することで,窒化炭素膜を成膜し,同じチャンバー内にセットしたピンオンディスク型の摩擦装置により,窒化ケイ素ピンとの間の摩擦に及ぼす接触荷重,すべり速度,雰囲気の影響を明らかにした.その後,ESCA及びラマンによる表面分析が行われた.その結果,摩擦係数が窒素分圧とともに減少すること,摩擦により窒化炭素膜の構造が,sp3結合が多い構造から,sp2結合の多い構造に変化し,それに応じて低摩擦となることが明らかにされた. 次年度は,成膜後のCNx膜を別の環境制御型ピンオンディスク型摩擦試験装置において,広範囲の荷重及びすべり速度条件下で摩擦実験を行い,基本的摩擦特性が明らかにされた.さらに,実用化を考え,チャンバー内ではなく,ノズルで窒素ガスを供給した場合でも超低摩擦が得られることを明らかにした.
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