研究概要 |
今年度は,べん毛モーターの構造について研究している協同研究者の一人(相沢)の協力により,彼が構造解析によって明らかにしたべん毛モーターの部品の構造を用い,具体的にべん毛モーターの実際の構造に近いモデルを作り上げ,流体古典的な潤滑理論の手法を用いてべん毛モーターの軸受けが潤滑可能であるかを調べた.べん毛の運動を推進力に変換する機構を流体力学的に研究するべん毛のスケールを考えると通常の流体力学的計算のみでは不十分で分子の大きさの効果やブラウン運動の影響も考えた運動解析が必要である.今年度は流体力学的計算は研究分担者の二人が(中野,桃園)が担当し,まず古典的な数値解を得た.その結果古典的な理論からは潤滑が困難であるという結果を得た.べん毛モータの場合にはマクロな系では問題にならなかった分子間力の効果も重要になるが,この効果はさらに潤滑状況を悪化させることもわかった.従ってなんらかの非古典的潤滑機構の存在が示唆された.このような潤滑機構として考察した機構には電荷の離散性の効果、*電気2重層の効果,超潤滑の効果などがある.来年度においてここに述べた効果の定量的評価をおこなう. またべん毛モーターの軸受け部分の摩擦に関する理論的な解析を目的としてべん毛モーターの表面粗さを特徴づける量を抽出するためウェーブレットを用いた.今年度はウェーブレットをべん毛の表面粗さ解析に用いるための数学的枠組みを構成した.
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