表面力は機械の超精密化や微小化につれてますます顕在化され、設計、製造、組み立ておよび使用の各段階においてその重要性が増している。表面力にはvan der Walls力のような遠隔作用力とメニスカス力のような直接作用力がある。表面力の研究には球面と平面間の引っ張り力を測定することが多い。この場合、メニスカスが厚いときには遠隔作用表面力を無視してメニスカス力のみを測定できるが、メニスカスが極薄いときには遠隔作用力とメニスカス力とを区別することが困難になり、測定結果の解釈には注意を払う必要がある。また、メニスカスが極薄いときに、固体表面の変形も表面力の測定結果に大きく影響する。 本研究では、固体表面の変形による影響を考慮した上で、遠隔作用力と直接作用力を含める球面と平面問の引っ張り力に関する解析を行った。その結果、Surface Force Apparatusのような引っ張り方式で固体表面の表面力を測定するとき、固体表面の変形のほかに、雰囲気も測定結果に絶大な影響を及ぼすことが分かった。また、相対蒸気圧が増加するにつれて、最初は吸着膜が表面力を低下させることによって引っ張り力も低下するが、その後ナノ間隙内で吸着膜によって形成されたメニスカスが大きくなり、次第にその効果が吸着膜による表面力の低下を上回り、引っ張り力が上昇に転じることが明らかにされた。
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