研究概要 |
本研究の目的は,経済学の分野で極めて有効なツールであるゲーム理論を,構造系と制御系の同時最適設計問題を含む,一般的な工学の多目的最適設計問題に対して適用可能な,全く新しい最適設計法を確立することである.本年度は,この目的を達成するために,数あるゲーム理論の中でも特に,利害の対立する意志決定主体が合理的に振る舞う場合に,妥協点を与えるナッシュ交渉モデルを用いた設計法を提案した. 提案した手法の妥当性を検証するために,まず構造系の最適設計の一例として2自由度剛体ロボットアームの最適設計を行った.ここでは,アームの運動し易さを表す可操作度の向上と,アーム駆動に必要なアクチュエータの出力変動幅の低減という2つの設計目標を満足する設計解を導出した.得られた設計解は極めて妥当なもので,構造の最適設計問題に適用可能であることを示した. さらに,制御系単独の設計問題の一例として,プラント制御などにもっともよく用いられているPID制御系の多目的最適設計問題について検討した.制御対象は,2次遅れとむだ時間を伴うものとし,立ち上がり時間を小さくした上で,オーバーシュート量を抑えるようなPID制御器が構成できることを確認した. これらの結果,提案した交渉ゲーム理論を用いた最適設計法は構造系,制御系のどちらに対しても応用可能で,極めて有効であることがわかった.来年度は,構造系と制御系の同時最適設計問題に対して,提案した交渉ゲーム理論による最適設計法を適用し検討する予定である.
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