研究概要 |
紙,金属薄膜,写真用フィルムなど一般にウェブと総称される連続柔軟媒体の製造工程において,ウェブは多数のローラによって支持されて,方向転換を伴いつつ印刷,乾燥,塗布などの工程を経ながら搬送される.このような生産システムにおいては,ウェブとローラ表面間にウェブ走行に伴う周辺空気の巻き込みが生じ,その動圧潤滑効果によってウェブが変形しつつローラ表面上にわずかに浮上する.この現象はウェブに張力を与えるドラグローラ上や冷却用ロール上ではウェブのスリップや熱伝達率の低下などの悪影響を及ぼすのでウェブ浮上量をなるべく小さく抑える必要がある.このようにウェブ搬送においてはウェブとローラ間の浮上特性を正確に把握し,それによって潤滑・摩擦現象を制御することが最重要技術課題となっているが,この問題に対して学術的な取り組みをした研究事例はほとんどなく,生産現場での経験的な技術に頼っているのが現状である.特にウェブの中でも透気性を有する紙の搬送においては浮上特性の系統的な解明が全くなされて折らず,早急に着手すべき研究課題とされている. 本研究では紙に代表される透気性を有するウェブとローラ間の浮上特性を,ウェブの透過率,走行速度,張力,巻き角,ウェブ幅,ウェブ厚さなどを変化させて理論と実験の両面から明らかにした.その際,透気性ウェブを多孔質体とみなしてフォイル軸受理論の拡張を行い,ウェブ浮上特性を正確に予測し得る解析モデルを構築するとともに,このモデルにさらに表面粗さの影響を取り込み,ウェブとローラ間の混合潤滑問題が扱えるような解析モデルの完成を目指した.これらの一連の研究により従来経験に頼ることの多かったウェブ搬送系の問題に対して理論的な裏付けを得ることができ,今後予想されるウェブ搬送工程の高速化に際しても十分に対応できる解析モデルの構築ができたと考えている.
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