研究概要 |
転がり軸受の外輪と円筒軸との転がり接触や,転がり軸受の内輪とねじ軸との接触を利用した形式のフリクションドライブ・スクリューが開発され,実用に供されている.これらの送りねじの性能をボールねじの場合と比較すると,スラスト方向の許容荷重,剛性,位置決め精度が劣る反面,高速性,静寂性に優れる等の特長を備えている.しかしながら,現在のところ国内外を問わず,この種の転がりねじを取り扱った研究報告はほとんど見当たらない.本研究では,転がり軸受の外輪と円筒軸が接触する形式のフリクションドライブ・スクリューを対象として,駆動軸回転数,予圧荷重,潤滑条件が摩擦トルクに及ぼす影響を明らかにした上で,転がり軸受と円筒軸間に設定するねじれ角を任意に変化しうる機構を開発し,駆動軸の回転速度とは無関係に,送り速度を任意に変化させたり,駆動停止や駆動方向反転を実現することを目的としている.フリクションドライブ・スクリューの駆動性能とベアリングブロックの振動変位に関し,詳細な実験的検討を行った結果を要約すると以下の通りである. 1)フリクションドライブ・スクリューに生じる抵抗トルクは,他の転がり機械要素と同様に,荷重項と速度項から構成される.速度項に関しては,転がり軸受に充填されているグリースの影響よりも,転がり軸受外周面と円筒軸間の潤滑剤による影響の方が大きく表れる. 2)フリクションドライブ・スクリューに生じる摩擦トルクの変動は小さく,一般的なボールねじの場合と比較してかなり低減することができる.ただし,駆動軸の危険速度およびその近傍では,著しい変動が生起する. 3)二分割構造をもつベアリングブロック間に生じる相対変位は,定数項および周期的変動成分から構成されており,前者と後者はそれぞれ摩擦トルクおよび転がり軸受の玉通過振動に起因することを実験ならびに理論解析から明らかにした.
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