共振振動数28kHzを持つ超音波洗浄機で水中に超音波キャビテーションを発生させ、その挙動をCCD高速ビデオカメラで光学的に観察すると共に、キャビテーション衝撃圧の測定および広帯域水中マイクロフォンによるキャビテーションノイズの測定を行った。得られた信号は、主として初年度購入のFFTアナライザーで処理され、パワースペクトルが検討された。次に、簡易な燃料電池の電極としてしばしば利用される塩化パラジウム被覆(数乃至数十μm)のニッケル板を試験壁面として使用し、壁面洗浄効果を調べる実験を行った。この試片を、(1)水中噴流だけ、(2)超音波キャビテーションだけ、(3)水中噴流と超音波キャビテーションの混合流体場に、それぞれ一定時間さらすことによって得られる壁面の状態を、最終年度購入したデジタルカメラ搭載型の顕微鏡によって観察した。その結果塩化パラジウムの皮膜が剥がれる様子が詳細に観察され、その剥がれの程度はその面に作用する力の種類に依存していることが示唆された。すなわち超音波キャビテーションでは、個々の小気泡の運動に起因する局所高圧が壁面にランダムに作用するため、その結果、空間的にランダムに塩化パラジウム粒子が離脱される斑模様の表面状態が作りだされ、噴流との組み合わせによって、より効果的に洗浄作用が発揮される条件の存在が示唆された。一方、気泡挙動に関する理論研究も行った。これらの成果の一部は学術雑誌および国際シンポジウムで発表あるいは掲載予定となっている。
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