物体表面からの噴出ガスによる境界層遷移促進を調べるために行われた風洞試験データの再現を最初に試みた。噴出ガスが乱流であると仮定するパークのモデルを、Van Driestの減衰関数に基づいて既存の乱流モデルに組込んだところ、淀み点の加熱量について噴出ガスによる加熱量増加を定量的に再現した(文献1)。この手法を既存の熱化学非平衡コードに組込み、金星大気に突入したパイオニア・ビーナス探査衛星の飛行データ再現を試みた。突入軌道に沿って空力加熱量解析とアブレータの無応答解析を疎結合させ、衛星表面での温度、噴出量、噴出気体の組成の同定を行い、首尾一貫した境界条件を反復的に与えた。得られた結果より、飛行データで見られた下流域の強い加熱が再現され、温度の上昇量も定量的に比較的良い一致を得た(文献2)。一方、衛星下流域の加熱量を増加させる要因として、アブレータから飛び出した炭素片が衝撃層内で発光する可能性がある。これを調べるには強い輻射流れ場の密結合解析を行う必要がある。このような流れ場に対して、従来の完全陰解法は比較的安定であるが、著しい記憶容量と長大な計算時間を必要とする。このため、熱流束の陽的な取扱いを試み輻射流れ場の密結合解析の実用化を試みた。著しく強い輻射流れ場に対して、流れ場の支配方程式を陰的に解き輻射場を陽的に解いても、安定かつ極めて効率的に解けることが示された(文献3)。一方、アブレータから噴出した炭素化合物は衝撃層内で非平衡輻射を起こす。このため、非平衡熱化学CFDコードに輻射解析コードを組込みFIREIIの飛行データ再現を試みた。計算では非平衡輻射の特徴をよく再現したが、輻射熱流束についてほ飛行データを大幅に下回った。炭素片からの輻射を模擬するために主流にCNを混入させて輻射加熱量の変化を調べたところ、波長の短い領域で飛行データの輻射加熱量を再現した(文献4)。
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