過去2年間に開発を進めてきた、突入軌道に沿った空力加熱およびアブレータの熱応答解析統合コードを適用して、Stardustサンプルリターンカプセルの突入シミュレーションを行い、米国の解析結果との比較を通して、コードの検証とアブレーションガスによる早期乱流遷移の効果を調べた。乱流遷移させない場合は米国の解析例と良く一致したが、乱流遷移させると下流域の加熱率が著しく上昇する結果を得た。次に、この統合コードを用いて、パイオニア・ビーナス金星探査計画で大気圏に突入した4機のカプセルの突入シミュレーンョンを行い、飛行データとの比較を行った。4つのカプセル全ての場合において、下流側で計測されたアブレータ内部温度は淀み点側の内部温度を著しく上回ったことが飛行データに示されているが、本解析は飛行データと同様の結果を与えた。飛行データとの定量的な比較でも概ね良好な一致を得た。以上の結果から、淀み点下流域に見られた著しい空力加熱現象は、アブレーションガスによる境界層の早期乱流遷移と境界層内の渦粘性の増大によって生じることが示された。また、アブレーションガスがもともと乱流状態にあると仮定する乱流モデルを用いることによって、飛行データを定量的に説明できることが初めて示された。 以上の統合コードでは、スペクトル依存性を詳細に考慮した輻射加熱解析コードを用いて輻射加熱量を求めたが、流体との連成は考慮されていない。木星大気圏に突入したガリレオ突入カプセルの飛行データは、パイオニア・ビーナスと同様に下流域で著しい空力加熱が生じたことを示しているが、この解析を行うには輻射と流体の連成を解かなければならない。これまでに、スペクトル依存性を考慮した輻射流体の並列計算コードの開発が進んでおり、アブレータ熱応答解析コードと組み合わせることによって、ガリレオ突入カプセルの解析が早期に実現できるところまで来た。
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