研究概要 |
本研究は,軸流中で高速回転する円筒上に発達する捻れた乱流境界層において,壁面せん断応力を計測することを期間内の主目的としている。本研究はこの壁面せん断応力を,(a)レーザ計測,(b)微小熱線,(c)壁面トレーサ,(d)ヒートトレーサ,(e)運動量積分方程式,等の方法により計測しようとするものであるが,本年度はまず,(b)微小熱線と(e)運動量積分方程式により調べている。 測定に使用した熱線は直径3μmのタングステン線で,微小なI型プローブを回転する方法とV型プローブを併用した。壁面のごく近傍の粘性底層内を詳細に測定するため,まず,現有の実験装置全体,特に回転円筒設置部の再調整を行った。実験は,全長1200mmの回転体が静止している場合と,速度比(円筒周速度/主流速度)が1の場合の乱流域のほぼ全域について行った。これらの壁面近傍の速度の測定結果に対して,バッファーフィッティング法を適用し,壁面せん断応力を評価した。この値をこの乱流境界層の軸方向と周方向の運動量積分方程式と比較したところ,比較的良好な一致を見た。ただし,積分した上での比較であるため,この壁面せん断応力が十分な精度であるとの断定はできない。また,(e)の運動量積分方程式から壁面せん断応力を求めるのは,軸方向への数値微分を要するため,局所的に高精度を要求することは難しいと判断された。 この他の壁面せん断応力の計測については,現在準備中であり,本年度の結果と総合して信頼性の高い値を求める。その上で,この種の流れの簡易計測法を提唱し,対数速度分布等の相似則に決着を付ける予定である。
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