本研究の目的は、研究代表者(島)が1997年に提案した、壁面反射再分配項を排除した応力方程式モデルをベースとして、多種多様な乱流を包括的に予測できる乱流モデルを構築することである。選択した多種の基本的性格を有する乱流を対象として、モデリングと検証計算を繰り返し、その結果として一般性の高い実用モデルを構築することを目指した。 対象とした流れの一つは円管内旋回乱流である。旋回速度分布が強制渦と自由渦を組み合わせた型であり、軸方向速度の分布は中心軸近傍でくぼみを有する典型的な流れをとりあげ、97年モデルによって予測計算を実行した。予測は初期段階での旋回の減衰とくぼみの回復を捉えたが、下流域では非旋回流への回復が遅すぎる結果を与えた。さらに、UMISTグループが提案した応力の対流に関わる再分配項の効果を検討した。この項を97年モデルに導入した場合、上流域での減衰は速すぎ、そのことが下流域での予測と実験データとの一致につながった。対流再分配項の係数の調整によって、データとの一致を全体として改善することが可能であると結論づけた。 流線曲率を伴う境界層とチャネル流、吹き出し・吸い込みを伴う境界層とチャネル流においては、97年モデルがパラメータの広い範囲で実験やDNSデータをよく再現することを明らかにした。 さらに、同心環内乱流、三次元乱流境界層、種々の軸まわりに回転するチャネル内乱流、非定常乱流、中心軸まわりに振動する円管内乱流について97年モデルの検証を実行中である。以上の検証に基づいて統合的なモデルの構築を推進している。
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