研究概要 |
現在欧米では数MW級の大型タービンを量産化する可能性を探っており,発電(製造)コストを低減するために,弾性設計によるロータ・マストの研究・開発が進められている.とくに我が国では,風力タービン設置可能な場所が海岸線を除くと丘陵・山岳地域に限られるため流入風の乱れ度が平均的に大きく,流入風の乱流特性を設計パラメタに組込むことは不可欠である. 本研究は,本研究は平成11年度および12年度の2年間において,風力タービンの翼およびロータ全体に働く変動空力荷重の推定手法の確立を目的とする.本年度は,流入風の平均速度分布形状(大気境界層を対数速度分布で近似),流入風向がタービン翼・ロータ全体に及ぼす影響を加速度ポテンシャル法に基づく数値解析により調べた.以下に主な結果を示す. ● 流入風が高さ方向への速度勾配を持つ場合,流入風の速度勾配が増大するとロータ面内での誘導速度ならびに揚力係数は上下に非対称性を増す. ● 流入風が高さ方向への速度勾配を持つ場合,翼ならびにロータ全体に働く非定常流体力の変動振幅は速度勾配とともに増加する.また,流入風の速度ヘッドのモーメント量をロータ面に渡り積分することにより,速度勾配が翼ならびにロータにもたらす流体力への影響を整理するパラメータを得た. ● 斜めからの流入風を伴う場合,ロータ後流に形成される斜めに傾いた渦構造の影響により,ロータ面内における誘導速度分布は周方向への不均一性を示す. ● ONERA法による動的失速モデルを考慮した結果,斜め流入を伴う低周速比運転時における翼根部での揚力係数変動に顕著な非定常性が現れた. ● 流入風条件として高さ方向速度勾配と斜め流入を同時に与えた場合,翼負荷の振動成分およびロータ全体に働く負荷は,それぞれの条件下における計算結果を足し合わせたものとほぼ等しい値を示す.
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