研究概要 |
現在欧米では数MW級の大型タービンの発電(製造)コストを低減するために,弾性設計によるロータ・マストの研究・開発が進められている.とくに我が国では,風力タービン設置可能な場所が海岸線を除くと丘陵・山岳地域に限られるため流入風の乱れ度が平均的に大きく,流入風の乱流特性を設計パラメタに組込むことは不可欠である. 本研究は,大気乱流を数値的に再現するとともにこれが水平軸風力タービンのロータに及ぼす空気力学的荷重を推定する手法を確立することを目的としている. 大気乱流のシミュレーションにより,ロータ面上における複数点での時系列風速データを作成するが,各々のデータ間の相関を考慮する必要がある.計算に用いるVeers′Modelには,入力データとして大気乱流のパワースペクトルとコヒーレンス関数が必要となり,これにランダムな位相を加え,逆フーリエ変換を行うことにより時系列風速データが作成される. ロータ翼に働く空力学的荷重の計算には,非粘性解析手法の一つである加速度ポテンシャル法を用いる.この計算法はロータ後流渦構造のマクロ的な非定常性に伴う影響を容易に評価することが可能であり,翼近傍流れに関してはONERA法により非定常揚力を考慮している. 大気乱流のシミュレーション結果をフィールド実験で得られた風速変動データと比較検討するとともに,この乱流風がタービンロータに及ぼす影響を調べた.その結果,従来の数値解析で行われていたロータ面内でのコヒーレントな風速変動に比べ,高次のモードを含む複雑な空力変動荷重がロータ翼に働くことが分かり,今後この計算手法が構造系を含む風車翼の設計に有効なツールと成り得るものと考える.
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