超音速ジェット中に生ずる自励振動現象の数値シミュレーションに関する様々な問題点を解明し、現象を正確に数値解析するために計算スキームが具備すべき要件を明らかにすることを目的として、本年度は、主に(1)軸対称壁面衝突ジェットおよび(2)軸対称Hartmann共鳴器流れ場を対象に数値実験を行った。取り上げた解析モデルは、オイラー方程式およびナビエ・ストークス方程式であり、数値流束評価法として、もっとも標準的な中心差分法と、最近よく用いられている近似リーマン解に基づくRoeの流束分離法、の2種を取り上げた。計算結果を振動周波数解析することにより比較検証を行なった。まず、周波数解析においては初期値の影響を除くためには、無次元時刻100以降のデータを周波数解析に用いる方がノイズを含まず好ましいが、現象の特性周波数は、より以前の時刻のデータで得ることが可能であることがわかった。流れ場の振動現象を捉えるためには、最小格子幅が存在し、それ以上の格子幅では数値シミュレーションにおいて衝撃波振動が抑制されることが判明した。これは、格子幅に直接関係する数値粘性の大きさおよび高周波成分が重要な役割を果たしていることが示唆されており、更なる検証の必要性が生じた。次に流束評価法は、周波数特性に大きく影響することがわかった。同じオイラー方程式モデルがナビエ・ストークス方程式モデルよりも実験値に近い値を示した。したがって渦の発生機構はともかくとして、自励振動現象は非粘性的な運動メカニズムが重要ではないかとの示唆が得られた。この件に関しては次年度重点的に数値実験によって確かめる予定である。
|