多翼ファンの吸込ノズルを羽根車中心から偏心させることによって同心に取り付けた場合より、同じ風量で高い吐出し圧力を得ることを目的として実験的研究を行い、吸込ノズルの偏心位置や大きさ、羽根車形状、ケーシング形状等が偏心による圧力上昇に及ぼす影饗、ファン性能や内部流動状態に及ぼす影響について検討した結果以下のことが明らかとなった。 1.適切な弦節比の羽根車を用い、偏心した吸込ノズルを、スクロール吐出し口から十分離れた上流位置に取り付けた場合には偏心なしの場合に比べ高い吐出し圧力が得られる。 2.吸込ノズル偏心ファンでは、シュラウド隙間を通って吸込側に戻る再循環流とスクロール巻終わりの羽根部分を通って内向きに吸込側に戻る流れが生じ、これらの流体は高い全圧を持って再び羽根車を通過し、さらに全圧上昇する。吸込ノズルから吸込まれる流体はこれらの流れによって流れの領域が狭められ、翼列を通過する流速が速くなり、大きい翼列仕事を受けて大きく全圧上昇する。 3.シュラウド隙間からの再循環流は、羽根車内径より内側で旋回流れとなり、この旋回流れの遠心力につりあうように圧力勾配ができており、羽根車内径位置での圧力は高くなり、その結果として高い吐出し圧力が得られる。 4.羽根の弦節比が1を越えて大きいと、偏心させたときに大きい圧力上昇を得ることができ偏心の効果が現れる。逆に弦節比が1より小さいと、大きな圧力差を支えられず、偏心の効果が小さい。 6.ケーシング形状のパラメータのうち吸込口径の大きさは羽根車外径の69%程度の時、またシュラウド隙間は羽根車幅の56%程度のときに偏心による圧力上昇が最も大きく現れる。 7.ケーシング広がり角(ケーシングの大きさ)は、再循環量に大きく関係し、大きくすれば再循環流量が増し、偏心によって圧力上昇は増大する。
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