本研究は、羽根車直径が数センチ以下のミニ・ターボ形ポンプの高性能化を図るための基礎として、流体工学的な問題を実験と数値解析の両面から調べ、このようなミニポンプの流体設計指針を明らかにすることを目的としている。そのために、在来設計法(比速度300付近)に基づく外径36ミリの羽根車(2個:前面シュラウドのある場合と無い場合)を新たに準備して性能試験を行ない、これまでの結果との比較を通して、本研究者の提案する設計指針の妥当性を提示した。主な成果は以下の通りである。 1.羽根出口角を大きく取ることで揚程一流量曲線が右上がりとなる低流量域での不安定特性が現れるが、その改善法としてポンプ出口の水流の一部を吸込み管にバイパスさせる方法を提案し、その有用性を明らかにした。 2.レイノルズ方程式とk-ω乱流モデルを用いて、ミニポンプ羽根車の1通路内の定常流を数値解析して流体性能を求めた結果はいずれの場合も実験結果と良好に一致した。 3.半開放形羽根車の水力性能に及ぼす軸方向隙間の影響についても、乱流解析により妥当な予測ができることを明らかにした。 4.在来設計の羽根車を用いた性能試験結果から、前面シュラウドのあるクローズド羽根車のほうがセミオープン羽根車よりも流体性能が高いことが分かった。これはシュラウドの壁摩擦よりも隙間に基づく損失が大きいためと説明される。 5.ただし、ミニポンプ向きの設計指針を採用することによって、セミオープン形であっても十分に高い流体性能が実現できる。
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